カーボンスポーク・ホイールは本当に良いものなのかライダーの疑問と不安点の回答
カーボンスポーク・ホイールが欲しいかと問われたら、当然ほしいと言います。
ただ、その魅力を具体的に聞かれると意外とざっくりしています。
ロード乗りの友人数人にアンケートをとってみたのですが、以下についての興味が多かったので、それについてお知らせしたいと思います。
カーボンスポーク・ホイールについての疑問
多かった疑問や不安点は以下です。
あなたの疑問も含まれているでしょうか?
・乗りごこち
・エアロはあるのか
・耐久性
・メンテナンス性
・品質
カーボンスポーク・ホイールの乗り心地と耐久性
乗り心地を比較するのはすごく難しく、個人的な感想も含まれるのですが、それを踏まえて読み進められてください。
結論からお知らせすると、乗り心地は良くなります。
自転車の場合、衝撃吸収のほとんどはタイヤが担います。
空気圧を下げると衝撃に強くなりますが、漕ぐときの抵抗が大きくなります。
空気圧を上げると衝撃は伝わりやすくなりますが、漕ぐときの抵抗が下がります。
ここは通常「適正圧力」にしたものとして進めます。
タイヤの次に衝撃を吸収するのがリムやスポークです。
材質の強さを表すには、「剛性(変形しにくさ)」と「強度(引っ張ったときに千切れるまでの強さ)」の2つが関係します。
剛性は「ヤング率」で示され、強度は「引張強度」で示されます。
- ヤング率(GPa):引張強度(MPa)
鉄(S45C):210:570
ステンレス(SUS304):200:590
アルミ(A5052):71:260
カーボン:60:650
カーボン:200:2200
カーボン:300:1000
カーボンは使われる素材によってかなり自由にヤング率や強度をコントロールできるようなので、3つのパターンについて記述しました。
ちなみに、ICANでよく使われている素材は東レT700とT800で、東レのサイトで見ると、それぞれのヤング率:引張強度はT700で500:4900、T800で560:5490となっていました。
つまり、鉄と比べて強く、折れにくいということになります。
筆者は自転車部品のではありませんが、機械設計者の端くれなので、そんな素材があれば、筆者ならば、当然鉄よりも華奢な造りにします。
その分、たわませることができ、軟らかい乗りごこちになる製品にすることができるでしょう。
鉄とカーボンで全く同じ形状の製品があったとしたら、カーボンの方が固い印象の製品になるでしょう。
しかし、実際にはカーボンの方が体積を減らせるので、やわらかい乗り心地になるのと、自転車にとってかなり重要な要素である「軽量化」が更に進められます。
カーボンスポーク・ホイールのエアロ
カーボンのスポークを見ると、面白いことが分かります。
ICANの「AERO55」の商品画像の一部なのですが、ご覧になってお判りでしょうか?
スポークの中央部の断面を考えると丸ではなくて、楕円に近くなっていて、スポークの1本1本がエアロになっているのです。
リムも当然エアロになっています。
ここまで突き詰めて風の抵抗を減らしているのは、鉄やアルミのホイールでは見たことがありません。
カーボンのホイールは、プロが使ってもおかしくない、それだけの価値のある製品なのです。
カーボンスポーク・ホイールのメンテナンス性
カーボンは炭素と樹脂の混合素材なので、一番の敵は紫外線です。
混合されている樹脂部分が劣化すると、ホイール自体も劣化してしまいます。
一般的には、紫外線カットの塗装がされていたりしますので、外で乗ったらいけないなんて馬鹿なことにはならないのです。
普通に乗っていれば、全く問題なく使えます。
念のため、乗らない時は直射日光が当たらないところに保管するようにした方が長持ちすると思います。
後は、カーボン・ホイールに限りませんが、センターズレも起きてきますので、回転させ左右のブレや回転半径のずれを確認し、調整したいところです。
時々はスプロケットを固定している「ロックリング」の増し締めや、回転軸の摩耗度の確認、ベアリングの玉の摩耗度の確認、グリスアップもした方がいいでしょう。
これらは、割と難しいので、任せることが出来るショップを1つ見つけておけば安心です。
恐らく、振れ取りだけなら1本1000円~でやってもらえるでしょうが、グリスアップ、振れ取り、ベアリングチェックなどを頼むと、オーバーホールとして8000円前後価格と思います。
毎年やる必要はありませんが、長距離乗る場合はたまにメンテナンスしないとホイール自体をダメにしてしまうこともあります。
カーボンスポーク・ホイールの品質
品質は、作っている現場を横について見ていることは出来ないので、信用できる会社かどうかで判断するしかありません。
ちなみに、カーボン・ホールの場合、どのような工程があるかというと、以下のようになっています。
ステップ1:設計
3DのCADで設計することがほとんどです。
ステップ2:カーボンファイバー素材のカット
裁断機で、使いやすい大きさにカーボンをカットします。
ICANの場合、素材のほとんどは東レのT700とT800みたいです。
日本製の素材は世界でも信用が高いので安心ですね。
ステップ3:型枠にカーボン素材を並べる
専用の型枠にカーボン素材を隙間なく貼っていきます。
形状も複雑なので、この辺り手作業でないと機械で一様にやってしまうと、弱い部分が出来てしまいます。
目で確認しながら作るので、時間と手間はかかりますが、手作業の方が間違いないです。
ステップ4:金型に素材とホイールをセット
カーボンを型枠にセットしたら、プレス機に入れ圧縮します。
ステップ5:バリ取りとスポーク穴開け
バリ取りをした後、マシニングセンタで正確な位置に穴あけを行います。
スピンドルが穴を開けるので、人間がやるよりも正確に、きれいに開きます。
ステップ6:表面仕上げと検査
バリを取っただけでは終わりではありません。
手作業で表面を仕上げて、検査を行います。
ステップ7:リム表面と穴のチェック
穴位置がずれていたり、穴にバリがあったら危ないので1個1個チェックしていきます。
ステップ8:真円度、左右たわみのチェック
ホイールなので、ちゃんと真円度が保たれているかのチェックを行います。
当然、左右のブレがないかも検査対象です。
そして、検査基準ですが、世界基準のISOに乗っ取っているので、世界中のどこでも求められる基準をクリアする製品となります。
日本ではJIS(日本工業規格)の方がメジャーですが、近年JISの方がISO(世界基準)に合わせているところもあり、日本国内においてはほぼ同じものと考えて問題ないです。
製造工程の全てをICANが公開していますので、是非チェックしてみてください
中々、カーボンホイールを作っている工程は見れませんので、ロード乗りとしては見ておく価値はあると思います。
ICANファクトリーによるカーボンバイクリムの製造方法
カーボンスポークも1本1本手作業で組み立てている様子も見れます。
100%ハンドメイドICAN AERO40ホイール
こうやって公開している会社は信用が出来ますよね。
注文する方としても、どんなものが届くのか想像もできます。
実際に乗ってみないと分からないところもあるでしょうから、近くのショップでカーボンスポーク・ホイールの自転車に試乗させてもらうのも手だと思います。
ただ、ショップではかなり効果で選択の幅も少ないので、買うのは通販がおすすめです。
外部ライター:奥野 晃一