カーボンスポーク・ホイールの乗り心地
カーボンスポークのホイールを検討するとき、絶対切り離せないのが「乗り心地」です。
ネットの感想を見ても、「固い」という方と「柔らかい」という方がおられます。
カーボンスポークのホイールは固いのか軟らかいのか
実はこれミニベロ大好きな筆者には理由が分かっています。
カーボンスポークのホイールの誤解についてお知らせします。
意見が分かれる理由の一つは、「誰の感想か」ということです。
普段、20インチのミニベロに乗っている筆者は、700c×25のクロスバイクにも乗ります。
例えば、マンホールのふたのような場所を通ると、ミニベロでも、クロスバイクでも、段差を感じます。
この時は、段が大きいので感じ方は人によるのでしょうが、誰でも気付くと思います。
これでは比較ができません。
道の側溝とアスファルトの段差はミニベロの方だと全く感じません。
クロスバイクの方では明らかに段差を感じます。
この時点で、「クロスバイク(700c×25)の方が、乗り心地が固い」と感じているのです。
これと比べると、ミニベロのタイヤはふにゃふにゃです。
そのため、普通の自転車に乗っている方が、カーボンスポークのホイールの自転車に乗ったら「固い」と感じるのは間違いないです。
一方で、普段からロードバイクに乗っている方は、細いタイヤが当たり前でしょうから、カーボンスポークのホイールの自転車に乗っても「固い」とは感じないです。
むしろ、鉄のスポークと比べたら軟らかく感じるのが普通だと思います。
あとは、感じ方や思い込みもあるので、そこも影響してくるでしょう。
■カーボンの機械的な特徴
好きとか、嫌いとか、そう言った感情を一切入れずに語るとしたら、機械設計者でもある筆者がカーボンについて別の記事でお知らせしました。
比重を比較すると、鉄は7.87、カーボンは、2.25。
全く同じ形状のホイールを作ったとしたら、鉄で作れば7.87kgのとき、カーボンで作れば2.25kgとなるのです。
これは材料的な特徴なので、誰がやっても100%同じ結果になります。
次に「強度」を考えるとこれは、「引張強度」という、材料を引っ張ったときにどのくらいの力で引きちぎれるかというデータがあります。
鉄は400MPaでカーボンは1240Mpaです。
数値を見ると約3倍の強さがあります。
この引っ張り強さは、どのくらいまで曲げた時に耐えられるかの計算にも使われるので、重さは1/3で強さは3倍と考えていいでしょう。
カーボンスポーク・ホイールの軽さの秘密
ここからは、人によって変わってくる要素なのですが、上記の様に、全く同じ形のホイールを鉄とカーボンで作ることはないでしょう。
筆者が設計するとしたら、強さが3倍だと分かっているので、その分細くしたりして、更に軽量化を目指します。
単純に1/3にしても鉄と同等の強度があるので、それ以上はオーバースペックと考えるのです。
鉄よりも強いとは言っても、細くなれば、たわみやすくなるのは間違いありません。
手元にある鉄製のスポークを計ってみると、日本と台湾の場合、13番(2.34mm)、14番(2mm)、海外の物だと1.8mm、2.0mmでした。(筆者が手元のスポークをノギスで測っただけなので、公式かどうかは不明)
カーボンスポークは、エアロの場合フラットになっているので、細い方だと0.9mm、広い方で2.2mmでした。(Sapim CX-Ray)
これではどちらが太いのか分かりにくいですよね。
そこで、断面積で比較してみます。
直径2mmのスポークの断面積は、半径×半径×πなので、1mm×1mm×3.14=3.14㎟となります。
一方で、エアロスポークの方は、0.9mm×2.2mmで、角のR部分を無視して四角形で計算しても、1.98㎟しかありません。
実際には角のRがないので、もっと狭いはずです。
上記の例の場合、鉄:カーボン=3.14:1.98と約30%材料が削減されています。
カーボンの場合、まだオーバースペックなので、番手を下げていくこともできます。
66%削減したところで鉄のスポークと同等の強度なのです。
このように、鉄とカーボンを比較すると比重だけではなく、体積も減らせるので2重の意味で軽くできます。
細くなる分、たわみやすくすることもできるので、やわらかい乗り心地のカーボンホイールが多くなるのが自然な考え方でしょう。
ただ、好みもあるので、あまり体積を落とさず、あえて固めに感じるホールもあるでしょうから、選ぶ際は、スポークの太さや本数などに注目してみると参考になると思います。
まとめ
鉄とカーボンの材料的な特徴を比較すると、カーボンは鉄の1/3の重さで、3倍強い。
鉄よりも3倍曲げや引張に強い材料なので、鉄で作るよりもスポークを細くしたり、本数を減らしたりすることが出来ます。
その分軽量化できるが、細くしてたわませることもできるので、乗り心地は鉄のホールに比べて柔らかく感じることが多い。
あえて固くしてある物もあるので、スポークの細さや本数で比較すると参考になる。
外部ライター:奥野 晃一