後輪上がり(ジャックナイフ事故)を防ぐ方法
後輪上がり(ジャックナイフ事故)とは
主にスポーツ車に起こる現象ですが、交差点で信号が変わった時や横道から人や車が急に飛び出してきたときに、急ブレーキをかけた時に起こります。
前輪がロックして、後輪が持ち上がり、下手をすると自転車ごと転倒し、運転者はケガをするでしょう。
MTBにおいては、「ジャックナイフ」という技であり、練習してわざと後輪を持ち上げます。
当然、転ばないように練習するのですが、ロードバイクやクロスバイクなどではこういった技は普通しません。
そのため、実際に体験するとパニックに陥ってしまいます。
勢いがつき過ぎている場合は、自転車ごと転倒して事故になることもあります。
さらに、ジャックナイフ状態になってしまうと、後輪が浮いているので、何も対処ができないのです。
倒れた時に腕などで頭を保護する程度となってしまいます。
後輪上がりの原因
後輪上がりの原因は「慣性」です。
中学生の時に物理で習った「慣性の法則」によるものですが、もう少し分かりやすくいうと、「車は急に止まれない」です。
それまで時速20kmとか30kmで走っていたとして、急ブレーキをかけたからと言って、急には止まれないのです。
また、軽快車やシティサイクルと比べて、スポーツ車(ロードバイクやクロスバイクなど)の方が車体重量は軽いです。
これにより、浮かびやすくなっています。
さらに、ミニベロと比べるとスポーツ車の方が、重心が高い位置にあります。
ミニベロはタイヤサイズが20インチまでを指しますので、必然的にサドルの位置も低めになります。
重心は低い位置になります。
そのため、ミニベロでジャックナイフ事故になることはほとんどないと思います。
ロードバイクやクロスバイクは、700などは27インチ相当の大きさなので、サドルの位置は高くなります。
重心はどうしても高い位置になり、重心が高いと転倒しやすくなってしまいます。
あとは、ブレーキのタイミングの問題もあります。
右のブレーキレバーは一般的に前輪のブレーキとなっています。
右利きの人が多いので、右の方が反応が早く、強い力で握るので後輪に比べて、早くしっかりブレーキがかかります。
これらの複合理由により、ジャックナイフ事故は起こってしまうのです。
ブレーキの左右はJIS(日本工業規格)によって決まっている?
後輪が持ち上がる現象(ジャックナイフ事故)の理由の一つに右ブレーキが前輪だからというのがありました。
では、左右のブレーキを逆にしてしまえばいいという考え方もあります。
ところが、JIS(日本工業規格)では、以下のような一文があります。
- ブレーキレバーの配置 ブレーキレバーは,一般に,前ブレーキ用をハンドルバーの右,後ブレーキ用をハンドルバーの左に配置する。(JISD 9301)
JISに適合している自転車にしたい場合は、右ブレーキレバーを握ると前輪のブレーキがかかり、左のブレーキレバーを握ると後輪のブレーキがかかる必要があるのです。
ブレーキレバーの方法が決まっているということは、フレームにブレーキワイヤーを通す穴が開いているものなどは、その位置にも関わってきます。
右と左を入れ替えると、ワイヤーの取り回しなどでかなり不格好になってしまいます。
正直、あまりお勧めできません。
後輪上がり(ジャックナイフ事故)の防止方法
- ブレーキ左を先に掛ける練習
一番簡単な防止方法としては、左側(後輪)からブレーキをかける練習を日ごろからしておくことです。
意識の問題になりがちですが、とっさの場合は日ごろの行動がそのまま出ます。
左手はブレーキレバーに指をかけて、いつでもすぐにブレーキがかけられるようにしつつ、右手はグリップをしっかり握っておけば、ブレーキをかける際は右がワンテンポ遅れます。
後輪のブレーキが先に効けば、ジャックナイフはかなりの確率で回避できます。
- 速度を抑える
そもそも、かなりの速度で走っているのでいざというとき後輪が上がってしまうのです。
通勤・通学などの場合は街中を走ることが多いでしょう。
普段から常識の範囲内の速度で走っていれば、ジャックナイフになる可能性も下がります。
交差点などで信号が変わったタイミングだけではなく、前を走っている自転車が急に止まったり、スピードを落としたりした場合は、急ブレーキは避けられないので、スピードを落としておけば回避できます。
大きな道路でスピードが出せそうなところでは通常通りに走るという使い分けもいいと思います。
- ジャックナイフを練習する
ロードバイクやクロスバイクなどではあまり向いていないかもしれませんが、MTBなどを使ってジャックナイフを練習するのです。
ジャックナイフをマスターしたら、どのくらいで後輪が跳ねあがるのかの感覚も身に着けることが出来、事前に予防することが自然にできるようになります。
一番怖いのはパニックになってしまい、動けなくなってしまうことなのです。
練習して、ジャックナイフと友達になれば、いざというときに身体が反応して受け身を摂ることもできるようになります。
外部ライター:奥野 晃一