ロードバイクの安全性について考えてみよう
ロードバイクに乗る、というのは、一種スポーツマンとしての矜持を試されているところがあります。したがって、自己の安全性、他人への安全気配り、マナーなどの面にも非常に気を遣うものです。
しかし、それを支えているロードバイク自体の安全性については、あまり深く考えることもなかったような気がします。
ここでは、「ロードバイクの安全性」 についてあらためて見ていきたいと思います。
1、ロードバイクには注目すべき技術がふんだんに使われている!
たとえば、他のジャンル(クルマ、バイクなど)と比較してロードバイクを見た場合、最先端の技術が惜しげもなく使われていることに驚きを覚えます。
機械部分の高度な繊細さ、フレームの軽量化や強度を最適化した設計などなど、数え上げればキリがないほどです。
しかし、ここで疑問が生じます。
バイクは、クルマのようにシェルに包まれているわけではないので、リスクを伴ったスポーツであることに間違いありませんし、だからこそ、そこに抗しがたい魅力があるわけですが、性能をここまで追求していて、果たして安全性は考慮されているのだろうか、という疑問です。
安全性には、能動的安全性と受動的安全性があるのは皆さんご存じの通りです。
そして、能動的安全性のキモである操縦性・安定性に関しては、ロードバイクはなかなかのモノであることは言うまでもありません。
したがって、ここでは主に受動的安全性について考えてみたいと思います。
2、ロードバイクの安全性に基準はあるのか?
① UCIのルール
もっとも有名なのはUCI (国際自転車競技連盟)のルールでしょう。
これは、レース出場に関するルールを詳細に定めたものです。
この中で、皆さんがよく知っているのは6.8kgの逆重量制限です。
バイク本体の軽量化を6.8kgまでに制限したもので、その趣旨は、過度な軽量化を防ぎ、安全性を最重視することにあります。
このようにUCIでは、競技ルールだけでなく、バイク本体の安全性についても事細かく決めており、それは、市販のロードバイクにも大きな影響を与えています。
したがって、UCI基準に合致することは、製品の品質を判断する大きな目安となります。
私達ICANの製品造りもUCIを前提としたものであることは言うまでもありません。
② ISO4210
他にも、BSI(英国規格協会)とDIN(ドイツ規格協会)を統合したEN規格や、日本のSBBA(スポーツ自転車協会)などの品質基準がありますが、現在もっとも充実した安全基準として、ISO4210があげられます。
これは、ロードバイクの構造全体にわたった基準を設けているもので、詳しく見てみたいと思います。
3、ロードバイクの安全性:フレーム
ISO4210では、フレームの以下の部分について基準を設けています。
・ フレームとフロントフォークアセンブリ 荷重落下・フレーム落下両方の衝撃試験
・ ペダル荷重による疲労試験
・ 水平力による疲労試験
・ 鉛直力による疲労試験
・ ハンドルアセンブリの静的強度試験・安全性試験
・ ハンドルバーとステムアセンブリの疲労試験
・ フロントフォークの静的曲げ・動的衝撃・曲げ疲労試験
なかなかのメニューであることがお解りいただけるでしょう。
各部の金属疲労をチェックするとともに、特に前方衝突に対する強度を重視していることが読み取れます。
ママチャリのような自転車にも基準がありますが、ロードバイクの基準はそれよりも厳しく、特に安全性のチェックは入念におこなわれています。
4、ロードバイクの安全性:ホイール
ホイールに関しても、ISO4210では次のように定めています。
・ ホイール・タイヤアセンブリ・クリアランス
・ 静的強度試験
・ ホイール保持の状態
・ クイックレリーズ機構のチェック
・ リム・タイヤ・チューブのチェック
ホイールに関しては、静的試験だけで、動的試験の指定がありませんが、信頼のおけるメーカーではUCI規定も考慮しながら、さらに多種の動的試験をおこなっているのが通例です。
5、ロードバイクの安全性:ブレーキ
ブレーキについてのISO4210のチェック項目は次の通りです。
・ 手動ブレーキシステム・強度試験
・ 制動性能試験(ドライ・ウエット)
・ 耐熱性試験
これは、予想通りの内容ですが、雨天時の制動基準も定められていることは特筆に値します。
6、ロードバイクの安全性:ハンドル
ハンドルまわりの項目は以下の通りです。
・ ステアリングアセンブリ・静的強度試験と安全性試験
・ ハンドルバーとステムアセンブリ・疲労試験
ここでも単なる強度だけでなく、安全性の項目が入れられているのは心強い限りです。
7、ロードバイクの安全性:ペダル/BB/クランク
ペダル/BB/クランクに関しては、以下のようになります。
・ ペダル・BBアセンブリ・静的強度試験
・ BB衝撃試験
・ 駆動システム・静的強度試験
・ クランクアセンブリ・疲労試験
BBの衝撃試験というのは頼もしい限りです。
これらにメーカー独自の動的試験を加えることで、BBまわりの安全性は確保されるとみていいでしょう。
8、ロードバイクの安全性:サドル
これがISO4210最後の項目になります。サドル関連です。
・ 静的強度試験
・ サドル/やぐら・疲労試験
・ シートポスト・疲労試験
・ シートポスト・静的強度試験
シートポストの強度も大切なポイントです。メーカーでは、完成車に実際の走行試験が加えられるのはいうまでもありません。
9、安全性の番外編:ヘルメットとライト
① ヘルメット
ヘルメットではまずフィット感が重視されるところです。
日本人の頭に合わせたアジアンフィットのものがオススメですが、やはり、これは店頭で実際に試して選ぶべきでしょう。しっかりしたメーカーのものであれば、安全性には問題ありません。
軽量さも重要です。長時間の快適なライディングでは無視できない点です。高価なものほど軽量であるとみていいでしょう。200~250g程度であれば問題ありません。
ベンチレーションも高価であるほど様々な工夫が凝らされていますが、通気性の良さは空気抵抗を減らすことにもなるため、レースなどでは重視したいところです。
レースに使用するには、JFCシールの付いたものが必要です。さらにCE EN1078規格はより厳格です。
② ライト
夜間とトンネル内での安全性を考えた場合、軽量であるとともに一定の光量が必要です。
フロントは、前方10mが確認できるもの、400cd(カンデラ)以上、または400~1000lm(ルーメン)の光量が望ましいところです。
リアは、後方100mから確認できる赤か橙のもの。10~15lmの明るさで、常時点灯できるもの。リフレクターと上手に併用することをおすすめします。
10 まとめ
これまでに見てきたように、ロードバイクの安全性について、メーカーで相当配慮がなされているのがおわかりでしょう。
あとは、適切な整備と走行時の安全への配慮、つまりライダー自身が気を付けるべきことです。
最善のライディングで、充実したバイクライフをお楽しみください。
ICANも応援しています。